朝起きてカーテンを開けると、外は一面の銀世界。屋根も道路も、山も真っ白。ふわふわの新雪が、巨大な雪だるまを作れるくらいにたっぷり積もっている。足跡も自動車のわだちもまだない。長靴をはいて思う存分雪の上を歩き回れる至福の時だ。登山道の雪が登山者に踏み荒らされる前に、さっさと朝食をすませて天王山に登ろう。こんな雪景色が一冬に一度でもあれば最高なんだけど、最近は天王山周辺で雪遊びができるほど雪が積もることはめったにない。世間で言われている地球温暖化のせいだろうか。雪の降らない冬はつまんないなあ。
雪と遊べないのなら、氷の結晶を観察して楽しもう。
前夜は満点の星空、翌朝は快晴。そんな真冬の朝は冷え込みがきつい。吐く息が白く、手袋の指先がかじかんでいる。早朝の散歩は寒さがつらいけれど、僕にとってはうれしいひと時だ。公園の植木や道端の雑草に霜が降りているからだ。葉っぱには砂糖をまぶしたように、小さな氷の結晶がびっしりとついている。デジカメで撮影して拡大して見ると小さなつぶつぶの結晶に混ざって細長い棒状の結晶が、栗のイガみたいに密集しているところがあった。霜は空気中の水蒸気が、植物などの表面で氷の結晶となったものだ。どうして細長い結晶になるのだろう。最初に凍った小さな小さな結晶の回りに均等に水蒸気が凝固して結晶が大きくなるのなら、ダンゴ状の丸っこい形に結晶が成長するように思えるのだが、実際はそうではない。雪の結晶と同じく、さまざまな形状があるそうだ。たぶん結晶ができる時の水蒸気の量や気温や風速とか、いろんな条件の違いによって結晶の形が決まってくるのだろう。
手軽に霜の結晶を観察するために、100円ショップで買った洗濯バサミみたいなマクロレンズをスマホのレンズに装着して接写してみた。マクロレンズとは、被写体に近づいて大きく写すことができるレンズのこと。虫眼鏡みたいなもんだ。スマホを被写体にぐっと近づけて撮影できるけれど、ピントを合わせるのがちょっと難しいかな。画質はそれなりで良いとは言えないが、結晶の形は十分確認できる。思っていたよりきれいに撮れた。こんなに安いマクロレンズでも、けっこう楽しめるんだ。自然観察でもスマホが大活躍だよ。
近ごろは「霜活」といって、霜の結晶を写真に撮って楽しむ人たちがいるそうだ。僕と同じように霜の美しさに魅了された人は、案外多いのかもしれないね。
霜を観察したら、次に霜柱も見てみよう。霜が降りる寒い朝には、土がむき出しの地面や土の崖などに霜柱が現れる。透明な歯ブラシの毛みたいに規則正しく並んだ氷の柱が、一致団結して土を持ち上げている。ほかの場所では、地面から自由気ままに曲がりくねって立ち上がっているわがままな霜柱もある。土の中から噴き出した水が瞬時に凍りついたかのような、不思議な景色だ。霜柱は地面の土に含まれている水分が地表で凍ってできる。気温が下がり、地表が氷点下以下になると地表の水分が凍る。すると地表より暖かくて凍っていない地中の水分が吸い上げられて、地表に集まってくる。そして集まってきた水分が、地表のすでに凍っていた部分の下で凍る。それが連続して繰り返されることで、氷の柱が上へ伸びていくそうだ。気温や土の材質、土に含まれている水分量などの細かな条件がそろわないと、霜柱にはならないらしい。
子供の頃は、霜柱の上をざくざくと音を立てながら歩き回ったものだ。もろく崩れる氷の柱を蹴飛ばしながら歩くのは面白かったなあ。今は蹴飛ばしたりしないよ。真冬の寒さが作りだした繊細な芸術作品を破壊するなんて、そんなもったいないことはできないよ。
霜と霜柱。冬しか見られない美しい氷の結晶。ほかにも冬ならではの面白いものがあるんじゃないだろうか。しっかりと寒さ対策さえしていれば、冬の自然観察は夏よりずっと快適だと思う。大汗はかかないし、日焼けの心配もない。不快なヤブ蚊だっていないんだよ。暖房の効いた部屋に閉じこもってばかりいないで、たまには冬の自然を味わいに野外を歩いてみてはいかがかな。
下の写真は、後日タムさんが撮って送ってきてくれた写真です
これまでの「天王山でひと話咲かせましょうータムさんのお話」全話は、こちらからご覧になれます。
下の写真は、後日タムさんが撮って送ってきてくれた霜柱の写真です。
かき氷のようでおいしそうで、しかもきれいですね。
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