この夏ドイツに行く機会があり、ミュンヘンにある国際児童図書館を訪ねました。
ミュンヘン国際児童図書館は1949年、世界初の青少年のための図書館として設立されました。当時のドイツでは戦争やナチスの洗脳による影響で、青少年の心は深く傷ついていました。創設者のイエラ・レップマンは、青少年の心をチョコレートやガムといったような実質的なものだけでなく、精神的な栄養によって救うという使命感を持って図書館の設立に奔走しました。
1983年、当初ミュンヘン市中心部にあった図書館は、郊外のブルテンブルク城という古城に移転しました。
ミュンヘンから電車とバスを乗り継げば、30分ほどでブルテンブルクに着きます。森の中のような散歩道を歩き、小川を渡ると目の前に小さなお城が見えてきます。目立つような看板もなく、「本当にここかしら?」と思いながら扉をくぐって中へ入ってみると、そこは大きなリンゴの木が枝を広げる中庭で、子ども連れの家族が遊んでいました。カフェが併設されていて、昼間から大きなビアジョッキを手にした大人たちがいるのは、ミュンヘンならではでしょうか。
中庭をぐるりと取り囲むように建物があって、小さなドアがいくつかあり、児童図書館のほかにもエーリッヒ・ケストナー、ジェイムス・クリュスのコレクションや企画展示室、ミヒャエル・エンデ・ミュージアム、児童文学研究者のための研究室、 中世の頃の礼拝堂などがあります。2024年4月にリニューアルした児童図書館は、白を基調とした内装で、窓からは美しい中庭や森が見えます。棚にはさまざまな言語で書かれた児童書、YA文学書が並んでいます。もちろん日本語の図書もあり、定番の絵本や懐かしい古い本から最新作、外国文学の翻訳ものまで、幅広い蔵書があって心が躍ります。国際児童図書館の所蔵は、書庫も含めて140言語、65万冊ありますが、ここでは24言語、2万冊が貸し出し対象です。
訪れた日にはちょうど日本人の親子が来館されていて、少しお話を伺ったところ、日本語で書かれた本は日本人学校以外ではなかなか手に入らないので、定期的に本を借りに来ているそうです。本だけでなく、図書館の建物や環境も気に入っていて、お子さんもここに来ることをいつも楽しみにしているとのことでした。
本の貸し出し以外にも、国内外から研究者を受け入れたり、小学校と連携してさまざまなワークショップやプログラムを展開したりしていて、「子どもたちに心の栄養を」と訴えた創設者の思いは今も息づいています。私たちも、、その精神を受け継ぎたいものですね。
(Y)
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