天王山が大好きで、いろいろな生きものと お友だちのタムさん。天王山の自然のことを みんなに知ってもらおうと作ったお話
近所の道端のフェンスにクズが巻きついていた。上へ上へと伸びたツルの先端はフェンスを乗り越えて、獲物を狙うヘビのかま首みたいにな姿をして風に揺れている。フェンスの端から端まで葉っぱで占領したクズは、上の方にからみつく相手がいなくなってしまい、今度は道路へ勢力を拡大しようと地べたにはい出してきた。クズのツルが伸びる速度は驚くほど速い。7月から8月にかけての最盛期には、1日に30㎝近くも伸びるそうだ。フェンスも標識も大木も、あっという間にツルにからまれて無数の葉っぱでおおいかくされてしまう。
向かうところ敵なしと思われるクズだけれど、そのツルに巻きついて水分や栄養を得て成長する寄生植物があるんだ。ネナシカズラというちょっと変わったツル草だよ。河川敷や堤防などに生えている雑草をおおうようにからみついた黄色い糸のようなものが見えたら、それはネナシカズラだ。北アメリカからやってきた外来種のアメリカネナシカズラも見かける。とても目立つから簡単に見つかるよ。僕がネナシカズラを初めて見たときには、河川敷の雑草の上に大量のラーメンの麺が不法投棄されているのかと思った。まさか植物だとは思わなかったよ。

名前の通り、ネナシカズラに根はない。正確には、種が発芽したときに地面へと根を伸ばす。その後にツルを伸ばして寄生する植物の茎に巻きつき、寄生根というものを宿主の茎に差し込んで養分を得るようになると、地面の中の根はなくなってしまうんだ。葉は退化して葉緑体を持っていないから、一般的な植物のように光合成はできない。からみついた植物から養分を分けてもらって、いや、横取りして成長するんだ。クズの茎に食い込んで養分をかすめ取って成長するなんて、ネナシカズラこそ最強のツル植物かもしれない。
大量のネナシカズラに巻きつかれてしまい、ツルが枯れてしまうクズがある。枯れたクズに巻きついていたネナシカズラは枯れてしまう。当たり前のことだけど、寄生していた宿主が枯れてしまえばネナシカズラも生きてはゆけない。宿主が枯れる前にツルを伸ばして次の宿主に寄生するのか、宿主とともに成長できるように養分をうまく分けあって生きていくのか、寄生植物の生存戦略もいろいろと大変みたいだね。
ネナシカズラの花は、米粒みたいに小さく白い花。秋には丸っこい実がいっぱいできる。冬になればからみついていたツルは枯れてしまい、実が地面に落ちる。地面に落ちた実の中の種は春に発芽して再びツルを伸ばし、寄生できそうな植物を探してまきつくんだ。
大地と水と太陽があれば光合成をして生きていける植物とは違い、寄生植物は他の植物の養分を一方的に奪って生きている。「なんてずるい植物なんだ」と思って、はたと気がついた。僕たち人間も、植物や生き物の命をいただいて生きているではないか。ネナシカズラは自ら生きるのに必要な量の養分を寄生先から得るけど、人間は生命を維持するだけにとどまらず、生活を豊かにするために植物や生き物の命を必要以上に奪っているんじゃないだろうか。人間の行いを棚に上げて、ネナシカズラを勝手に悪者扱いしてしまった。ごめんなさい、ネナシカズラさん。
【補足説明】
■ネナシカズラ
ヒルガオ科の一年草。ツル性の寄生植物。在来種。日本全土、東アジアに分布。ツルは黄色~橙色で小さな紫色の斑点があり、その太さは1~2㎜。
■アメリカネナシカズラ
ヒルガオ科の一年草。ツル性の寄生植物。北米原産の外来種。ほぼ日本全土に分布。ツルは淡黄色で斑点はなく、太さはネナシカズラより細くて1㎜程度。
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