「こんな素敵な図書館があるんです。高知県に行くなら是非」と、高知旅行の前にすすめられたのが、この梼原(ゆすはら)町立図書館、通称・ゆすはら雲の上の図書館です。
梼原町は、愛媛県と高知県にまたがる四国カルストに近く、面積の91%を森林が占める林業の町。その梼原産のスギ材を使い、「森の中で本を読む」をコンセプトに隈研吾さんが設計されたのが、この図書館です。
靴を脱いで入館すると、隈さんの建築で特徴的な木材で組まれた天井が目の前に広がります。床と階段、本だな、天井が、すべてつながったような木のデザインは、本当に森の中にいるような広がりを感じ、安心して座ったり寝転んだりして本を読むことができます。
雲の上の図書館独自で分類した「いろは48本棚」というテーマ書架や、それぞれのテーマに合わせた海洋堂のジオラマも見どころ。旅先であるにも関わらず棚の端から端まで読みたくなるような、魅力的な本棚になっていました。
福祉施設、保育施設、そして体育館に隣接していることもあり、図書館としての「本に出合う」という機能だけでなく、カフェやボルダリングコーナーを併設したりボードゲームの貸し出しをしたりするなど、多世代のさまざまな人の居場所となる工夫がされています。コンサートや映画会も定期的に催され、それらのイベントを図書資料と結びつける努力もされているようです。一番目を引いたのは、高知や檮原の郷土資料、文化・産業の本棚でした。町の魅力の発信になるのはもちろんですが、図書館としてこの町の文化・歴史を文献として残していく使命感を感じました。21時まで開館しているのも、働いている世代には魅力なのではないでしょうか。
レファレンスコーナーの司書の方にお話を伺うと、「昼間のにぎやかな図書館も好きですが、私は夜の落ち着いた館内も素敵だと思うんです」とのこと。本当にいつまでも居たくなるような空間で、「こんな図書館の近くに住みたいです!」とお伝えすると、空き家活用のポスターを指されて、「梼原では移住促進もしていますよ。私も移住してきたひとりです」と笑顔で話されました。(I)
*隈研吾…2021年東京オリンピックメインスタジアムであった国立競技場を設計したことでも有名。若き日の隈研吾は梼原で木材の可能性に出合い、自身の原点がこの町にあると話すこともあるという。
*これまでのお話はこちらからご覧になれます。