京都と大阪の府境にある小さな町・大山崎で、リトルプレス「大山崎ツム・グ・ハグ」など印刷物を作っている大山崎リトルプレイスです。このブログでは「大山崎ツム・グ・ハグ」記事を中心に紹介しています。 https://www.o-little-place.com/
今日もリトルプレス『大山崎ツム・グ・ハグ』の制作に励んでます。。。

こんにちは。山崎在住のお りこのかずひろと申します。 地元の話や映画や本の話を中 心にゆるく語るこのコーナー。

今号は必殺技のお話。


昔からずっと必殺技の習得に憧れていました。流行りの漫画「呪術廻戦」に出てくる技「領域展開」みたいなやつです。世代的には「かめはめ波」や「必殺仕事人の三味線」でもよくて、そういうのが実に欲しい。子供の時からそうだったし、大人になった今でも時々思っている自分がいます。バカバカしいと思いながらも諦めきれない。そんな気持ちが往々にして復活します。


必殺技は文字通り「必殺」という言葉であるからして、本当はかなり物騒です。以前、会社員だった時、予算未達の地獄の会議で、部長が「今月は必死になってやります」と言った発言を気に入らなかった社長が、「おまえ、必死というからには、必ず死ぬんだぞ」と真面目な顔で言ったのをよく覚えています。もちろん部長は「力の限り頑張る」という意味で言っていますが、社長の表情が大マジです。ギャグとして処理し、笑っていいのか分からなくて、場の時間が凍結しました。社長の必殺技が炸裂した瞬間です。これはもうなかなかレベルの高い技の発露でした。確かに社長はどことなく映画「スーパーマン」を演じたクラーク・ケントに似ていなくもなかったですし。でも今なら「パワハラ」間違いなしの発言でもあるのでこれはダメでしょうけど。部長大丈夫かな。


さて、この技関連ですが、僕がいつも夢見るのは浮遊テレポートです。ふわりと浮かびがあり瞬間的に場所を移動できる能力。どこかいつもと違う感覚の朝、もしや今日はできるかもしれないと信じて試してみます。むろん、できなくて落胆しますが、時にそういう日があります。派手な火炎とか光線とかは不要です。スティーブン・キングの「キャリー」などを読む限り、結局碌なことにならなそうなので。


この年齢なんだから必殺技の一つや二つぐらいはもっていないのとはいけないのではないかと思いますが、そもそも特技すら怪しいです。でも、色々考えると、時々技を開発していることに気が付きました。


最近開発したのは、語学の勉強で、duolingoというアプリが世界的にブームで、その中に無限カルタというコーナーがあります。画面右側に日本語五つ、左側に外国語が同じく五つ、それぞれ同じ意味の単語を押すとOKというものです。これで単語を覚える。昔手書きでやっていた単語帳のデジタル版みたいなやつです。


でもこのカルタ、制限時間がとんでもなくシビアで、五つの単語を見て一瞬で選択しないとすぐに時間切れになります。そこで僕が発明した技は、一番下の段を無効にするという技です。一番下の列の単語を意図的に揃えてしまい、五択の問題を四択にして簡単にしてしまいます。開発したとき感動しました。技名「五意整去」の誕生です。


この技は半年ぐらいかけて考えた「シン・必殺技」とも言えるものですが、人に教えてあげたら「セコい」「勉強にならんだろ」と散々な意見でした。でも僕は知っています。この技を使っているあなたがたの指の軽やかな動きと、これで得点を重ねていく内なる喜びを。


そう、現代の技は別に相手を倒すものではなく、喜んでもらうものでも良いはずです。スーパーヒーローはいないけれど、セコい僕がいる。いや、セコくない、特技でもない、トリビアでもない、生活の知恵でもなくこれは、必ず相手(アプリ)を倒せる微なる必殺技です。


みんな何かしら必殺とまではいかなくても、技を開発し、それを応酬しあって地域がいつの間にかバトルフィールドと化しているのを夢想します。所々で熱い戦いが行われ、培った技が炸裂しています。お隣のお菓子屋さん「カシエ」さんがお菓子作りに秘伝の配合を。雑貨店「Hey   Mart!」さんがどこで見つけたん?という道具の絶妙な棚陳列を。大山崎コーヒーロースターズさんが、コーヒーの焙煎に特化した舌加減を。彼らが技を日夜繰り出していると想像すると胸が熱くなってきます。この町で、自分がヒーロー戦隊の一員として生きていると信じるのも悪くない。 そして、いつか本当に飛べる日がきたら、その時は、必死な気持ちで必殺技を繰り出して、世のため人のため、僕は巨悪をやっつけてみせる事でしょう。


【プロフィール】

おりこのかずひろ

山崎(島本側)在住(15年目)。本屋店主。私的山崎観光案内所運営、映画「家路」監督。一児の父。物書きでもあります。

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【掲載紙面】
P2-3_Vol62_縮小

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