京都と大阪の府境にある小さな町・大山崎で、リトルプレス「大山崎ツム・グ・ハグ」など印刷物を作っている大山崎リトルプレイスです。このブログでは「大山崎ツム・グ・ハグ」記事を中心に紹介しています。 https://www.o-little-place.com/
今日もリトルプレス『大山崎ツム・グ・ハグ』の制作に励んでます。。。

 こんにちは。山崎在住のおりこのかずひろと申します。地元の話や映画や本の話を中心にゆるく語るこのコーナー。

 今号は本と本屋のお話。

 十月末に大山崎町で小さな「本屋」を始めました。妻が運営している編み物教室兼糸屋の一階部分です。これまで町の観光サイトを作ったり、町を舞台にした映画を撮影したり小説を書いたりした後の流れで、自然(?)とこうなりました。どうしてだろう。


 もちろん僕は本が好きで、人生のかなりの時間を本屋と図書館と読み書きで過ごしてきたわけですが、書店業界については無知も同然です。そこで、まずは先輩方の本屋さんを回ってみることにしました。最近では個人経営の本屋さんが増えているので、お手本になる所を中心にです。例えば、京都の「誠光社」さんとか「ホホホ座」さん、それから家具のイケアに行ったついでに、神戸元町の「本の栞」さんや「1003」さんなどを訪問してきました。


 このコーナーを読んでくれている方には十二分に伝わっていると思いますが、僕はとてつもなくシャイなので、なかなか店主さんに「今度、本屋を開店するんです。えへへ」などとは言い出せず。ただ黙って店内を歩き、どんな棚や台なのか、どんな本があるのか、どんなお客さんが来ているのかを観察させてもらいました。やがて「これ面白そう」という本を見つけるとパラパラとめくりはじめ、普通のお客さん化して完全に話しかけるタイミングを目的ごと見失います。最後のチャンスとしてはレジで支払う時のタイミングがありますが、こういう時にカッコつけたがるのも僕のダメなところで、ボードレールの詩集を買ったり、アーネスト・ヘミングェイの「移動祝祭日」を持っていったり、パリっ子を気取ってお茶を濁しました。当然ながらパリには行ったことないです。


 「移動祝祭日」はヘミングウェイの遺作であり、晩年になって彼が若い頃過ごしたパリについて回想して書いた本です。有名な作家がこぞって訪れたセーヌ川左岸にある「シェイクスピア・アンド・カンパニー」に通った話も出てきます。「青年時代にパリに住んだとすれば きみが残りの人生をどこで過ごそうとも パリはきみについてまわる なぜならパリは移動祝祭日だからだ*1       」などの超カッコいい言葉も多数です。開店準備が思ったようにはかどらず、焦った時にも、この本がずっと僕のポケットや鞄の中にあり続け、お守りのように心を温めてくれました。


 ところで、「本屋」を始めた身としては、これは仕事だという感覚と共に、町で遊ばせてもらっているという意識があります。僕が生まれ育ったのは別の町で、大山崎に対する個人的な縁は元々ありません、でも少しずつ何かするたびに知らない道や風景が減り、挨拶をする人が増えて、道端で手を振る回数が多くなりました。町の外から来た人が、町についての情報を僕から聞いて知りたがります。なんのかんの言っても、徐々に地元の人の方に近づいています。


 大規模な開発が好ましくないと思うのは、僕のような人がそんな風に町に溶け込んでいく余地や、何かできるスペースがなくなると思っているからです。開発で古い建物や田んぼがなくなることも寂しいのですが、大きな開発は町の余白を決定的に潰してしまいます。


 近くに大きな本屋があれば、本屋などやらないでしょう。だから「ない」ことの豊かさをとても意識しています。「本屋」だって辞める日がくることも、やはり考えています。そして、次の人たちが、「この町ならできそうだし、いっちょやってみるか!」と思って欲しいと思っています。そして世代交代の順番が来たら、僕らは静かに地ならしをして、去っていくというのが望ましいと思っています。


 珍しくまじめに書いていますが、買った「移動祝祭日」はまだレジの中にあります。ここ一月、気持ちを落ち着けたい時に繰り返し読んでいました。京都と神戸の本屋めぐりの旅はいまいちな首尾でしたが、この本との出会いが素晴らしかった。「パリには決して終わりがない。そこに住んだ人の思い出は、他のだれの思い出ともちがう*2       」。僕にとってこの本の存在とこの大山崎の土地は、だれの思い出とも違うものになりそうです。


 さて、最後に宣伝しても良いよと言っていただけたので、ここで宣伝です。

 大山崎町尻江に小さな本屋「プオルッカミル・ブック」をオープンしました。来てね。
さらに店舗で「山崎ブッククラブ」を開催したいと思います。毎月課題本を選定し、読んで一緒に語ろうという企画です。本の話をしたいという方、意見を聞きたい方、よかったらお店に来ていただき、ああだこうだと言い合いましょう。

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■引用部分「移動祝祭日」(土曜文庫 ) 福田陸太郎訳

*1 :エピグラフ   
*2:p236 4~5行目


【プロフィール】

おりこのかずひろ。山崎(島本側)在住(15年目)。私的山崎観光案内所運営、映画「家路」監督。一児の父。物書きでもあります。


これまでのお話はこちらから全話ご覧になれます。


■掲載記事
P1






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