紙面に納まることなく空や海を自由に駆け巡り、茶目っ気もあるカッと見開いた眼でこちらに向かってくる龍や鳥。一気に墨で描く緩急自在の筆跡でスピード感と迫力を、そして顔彩で艶やかさをまとった彼らを描くのは、大山崎在住の日本画家・山本あずみさん。教育現場で美術を教えながら国内外で個展やグループ展、美術展覧会に出展し、墨を使ったワークショップのスタッフや講師として墨を広める活動もされています(プロフィールは裏面参照)。
日本画家になった経緯やその活動、その道具や技法について、山本あずみさんに伺います。
小さい頃から家族と一緒に美術館によく出かけていた山本さんは、やがて絵画教室に通うようになります。そこではお姉さんたちの作品に驚き、油絵を学んだりコンクールに挑戦したりと、今までとは違う「絵」の世界に夢中になります。
中学生になって進学先を決める時が訪れると、山本さんは迷わず美術を専門に教える総合造形学科がある大阪公立高校に進学。その高校では1年生で日本画や版画、陶芸、デザインなどさまざまな分野からいくつか体験し、2年生で1分野を選択するシステム。山本さんは油絵と日本画を体験し、その違いを知ります。
大きな違いは、油絵は乾きにくく、上からどんどん塗り変えることができますが、日本画は塗り変えができないこと。日本画では、モチーフを観察していろいろな角度から描いたスケッチと、自分の中に取り込んで構成した写生をもとに下絵を作ります。その間に何度も修正して構図を確定し、墨で輪郭線を描き(骨描き)、薄い墨で影を入れ(隈取り)、本描きへ。このモチーフと対話して表現したいことに向き合える流れや、色が重なったときの発色の美しさに惹かれて日本画を選択。
2年間日本画の基礎を学び、その集大成となる卒業制作で祖母の躍る姿を描いて好評を博し、より本格的に日本画を学びたいと美術大学の日本画学科へ。 次号へつづく
*山本あずみさんによる日本画のワークショップが、R5年6月・7月に開催されます。参加者受付中!
【参考文献』
富山県博物館協会「日本画の成立とその名称」
ほか