3回にわたって本を紹介してきたシリーズも今回で最後となります。最後の2冊は、実在する図書館のお話です。
図書館の本を守った図書館員のお話。
2003年春、イラクへの軍事侵攻がバスラに達します。その時、図書館員のアリアさんは、「本にはわたしたちの歴史がつまっている」と、本を守るために立ち上がりました。毎晩毎晩少しずつ本を安全な場所に移します。とうとう全て移し、図書館が焼け落ちた時には3万冊の本は全部無事でした。平和な時が来るまで、本は守られています。
色の美しい絵本です。戦争や紛争のない、本を自由に手に取ることができる平和を、すべての人たちが持てることを心から願います。
最後に紹介するのは、図書館が語る図書館の話。
ずっしりとした重い荷物を受け取ったような、そんな深い読後感のある小説です。
明治にできた日本最初の国立図書館が主人公の話と、戦後を生き、その図書館に魅了された喜和子さんという女性の物語が交差します。
図書館の物語では、明治時代からの日本の近代の歴史の大きな流れが描かれ、その重みに圧倒されて溺れそうになりました。その時代を生きた文豪たちのエピソードが、たくさん織り込まれていています。関東大震災の時には避難所になり、戦前戦中には思想弾圧と言論統制によって発禁処分になった本が奥深くに収められ、侵略によって他国から奪われてきた略奪本も納められている。図書館とはいえ、暗い歴史も背負っているのです。
喜和子さんの物語では、彼女の幼年時代に深く関わる「としょかんのこじ」という一冊の絵本の謎を追います。喜和子さんと偶然知り合った作家志望の女性が、喜和子さんの元愛人の大学教授や女装が趣味の芸大生、友人のホームレスや古書店の主人などなど、魅力的な登場人物たちと謎を解き明かしていきます。戦後を生きた一人の女性の数奇な運命が浮かび上がります。
読み終わって、本の中で提示されたさまざまな問題が、現代にも続いていることに気づきます。「さあ、これからどうするの」という大きな問いを、投げかけられたように思いました。
これで8冊の本の紹介は終わりです。もしも、手に取って読んでみたいと思う本があったならうれしく思います。
さあ、図書室に、図書館に行きましょう!(N)