京都と大阪の府境にある小さな町・大山崎で、リトルプレス「大山崎ツム・グ・ハグ」など印刷物を作っている大山崎リトルプレイスです。このブログでは「大山崎ツム・グ・ハグ」記事を中心に紹介しています。 https://www.o-little-place.com/
今日もリトルプレス『大山崎ツム・グ・ハグ』の制作に励んでます。。。

 コロナ渦で更新を停止しているものの、私的山崎観光案内所(Webサイト)を今でも細々と運営しています。観光案内という名前がついているので、たまに観光がらみの問い合わせが来ます。質問されるのはたいてい、町にある名所の予約可否やアクセス情報です。例えば「何月何日に『待庵』の見学ができますか」といったものや、「いつ『たけのこがり』ができますか」など。それから「町内の観光マップを10枚ぐらい送ってください」であるとか、「パーキングはどこですか」といった質問です。このような単純な質問は、それぞれの施設や商工会や役場の連絡先をお知らせして終わらせています。


 中には難しい問い合わせもあります。「離宮の水の水源がどこにあるか知りたい」(サントリーさんの敷地ではないのかな?)、「大山崎山荘を建てた加賀正太郎さんは実は良い経営者ではないのでは」という質問で歴史的な再考を迫られたり、山崎の戦いの明智光秀の本陣がどこにあったか論争(長岡京にも候補場所があるそうな)に巻き込まれたりしています。最終的に未解決の質問も。昔あったらしいダンスホールの栄枯盛衰や、天王山の山中にあるという飲める湧き水の謎です。ほかには「本に掲載したいから秀吉が座ったという石の写真が欲しい」と言われて撮影しにいったこともあります。サイトは公のものではないので、わりとフットワーク軽めです。もちろん情報収集能力には限りがあり、忙しさで対応ムラがあるのが難点ですが、調べるのは面白いので、そろそろ更新を再開しても良いなと思っています。

秀吉の石 秀吉が座ったという石

 そんな観光サイトを運営しているものの、実は旅行にはほとんどいきません。実家も大阪で長距離の移動は不要です。旅行に行ったら行ったで人一倍楽しむのですが、行くまではできればずっと家にいたい派で、旅行意欲があまり湧きません。おそらく本や映画を読んだり見たりすることで、疑似体験として別の場所にしょっちゅう連れて行ってもらっているので、満足してしまっているのだと思います。


 その影響もあってか特に飛行機旅が苦手で、乗ったのは人生で二回しかなく、一度目は愛媛の先輩の結婚式に間に合わせるため。で、二度目がイギリスのソールズベリー(大聖堂とストーンヘンジがある)に留学中の妻に会いに行くのが目的の旅でした。飛行ルートはオランダで乗り換える、初心者難易度Aクラスのものです。向こうで買えるだろうからと、お土産と下着のみが入った鍵もかからないリュック一つで行きました。フライトで力を使い果たしたのか、到着後すぐに発熱。回復して最初に体験したのが、現地散髪です。当時は英語を全然話せないので「Could you my hair cut please」だけを覚えて、散髪屋でそれを連呼しました。読めもしない「タイムズ」を広げてカットしてもらっている最中にマスターがやたら何か言ってくるので、「だから髪切って」のフレーズを連呼していたら、それは分かっとるという顔をされて、手を耳に添える別のジェスチャー。どうやら「もみあげどうすんの?」と聞いているのに気が付きました。すかさず「ナチュラル」と意味わからない指示を出して、ナチュラルに仕上がるのを見守ったのが良い思い出です。


 無事に妻に会え、圧倒的に足りない服を現地の無印良品で買い、訪問した場所はいつもの3点セットの「美術館」「本屋」「CD屋」メイン。なんなら日本でも良くないか? という観光コース。その時に訪れたのが、ターナーの絵がある「テートブリテン」と小粋な古本屋多数、大型CD店の「HMVロンドン店」(ジャパンコーナーに大量のMISHAのCDがあった)。そのほかは公園でぼんやり座っていたり川を眺めていたり、パブに行ってみたり。外国に行ったところで、やることは日本と変わりませんでした。


 それでも現地で体験した場合の記憶の残り方は違うもので、空から見たオランダの水路がきれいだったとか、中国人に間違われてアンケートされたこととか、留学生の面前で100ポンド札を見せてギョっとされたとか。カセドラルで出席したミサで牧師さんに「よく遠くからきましたね」と言われたとか。韓国人の留学生に100円玉と交換で「韓国のり」もらったりとか。あとはそうそう、ヒースロー空港に向かうメトロの電車内で、髪を後ろにまとめたお姉さんが「ティファーニーで朝食を」を読んでいて、「うわー『ミス・ホリディ・ゴライトリー、旅行中』のまんまだ!」と思ったのを何年経ってもよく覚えています。(
*ミス・ゴライトリーは小説のヒロイン


 ちなみに、誘われれば旅行に行くので、昨年は瀬戸内美術祭を訪問してフェリーでの移動と島の暮らしを堪能しました。興味を覚えたのは美術よりも島で暮らす人々の方で、僕はどうも名所よりもそこで会える人の生活を見る方が好きなようです。


 サイトを運営しているのもたぶんそういう理屈で、行くよりも来てもらって自分の住んでいる町を案内したりする方が好きなんじゃないかなと最近思います。僕の観光の好みの場所としての例の3点で言うと、大山崎町にはアサヒビール大山崎山荘美術館という文句なしの「美術館」が既にあり、あとは「本屋」か「CD屋」が欲しいところ。島本町には素敵な長谷川書店があるからよいのですが、やはり大山崎町側にもう一店欲しいところです。CD屋はもう難しいだろうけれど、小さな本屋ならどうだろう。どうしようか。しょうがないから自分でやるか、と思わないでもありません。


 
【プロフィール】

おりこのかずひろ。山崎(島本側)在住(15年目)。私的山崎観光案内所運営、映画「家路」監督。一児の父。基本的にサラリーマンですが、物書きでもあります。


これまでのお話はこちらから全話ご覧になれます。


■掲載記事・紙面P2に掲載⇩ 
観光あれこれ




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