前号から、8冊の本の中の図書室や図書館を紹介しています。この中に、こんなところなら行ってみたいという図書館が見つかるでしょうか。今回は4冊目から。
怖くて、不思議な体験のできる図書館はいかがでしょうか?
いつもの市立図書館。主人公は、オスマントルコ帝国の税の集め方を調べようとして、教えられて地下にずんずん降りて行きます。そこで出会ったおじいさんに言われるまま、迷路のような廊下を進んで行くと、その先には大きな鉄の扉のある閲覧室があり、主人公は閉じ込められてしまいます。そして、カリッとしたドーナツを作るのがうまい羊男なども登場して、冒険が始まります。さて、主人公はどうなるのでしょう?
ふわふわと夢の中にいるような非日常の世界が楽しめます。
次も不思議な図書館、本が飛び交います。
建物をめぐる四編の不思議な物語の中の一つが「図書館」。地方の町営図書館に派遣されてやって来たのは、図書館調律師という変わった職業の女性。彼女の仕事は、図書館の野生を調教して夜間開館をし、本たちが回遊する様子を一般公開できるようにすることなのです。そして、かつて存在した「本を統べる者」と本たちが、安住の地として見出した場所が、図書館だというのです。本たちは野生を開放し、深夜にだけゆっくりと回遊し始めます。
夜の図書館で、こんな不思議な光景を見てみたいですね。
今度は、図書館周辺でいろいろなことが起きる町の話です。
六編の物語が、「物語を紡ぐ町」文善寺町の中で展開されます。それは「小説家があとがきに込めた思い」「コントのようなコンビニ強盗」「高校の文芸部員のイタい青春恋愛」「鍵穴を探す冒険」「子どもだけの夜の王国」「雪の日のパラレルワールド」と、いろいろなテイストの物語。町の図書館や職員がちらちらと登場して、繋がっていきます。
特に印象深い作品は、最後の『ホワイトステップ』です。雪の日の足跡と、雪の上のメッセージ。姿の見えない相手との交流。「もしも、あの時…」の少しずれた世界。その少しのずれは、生と死を入れ替えるかもしれない。そして、「としょかん いけ そこに」のメッセージを受け取った主人公は、出会うべき人に出会えるでしょうか。しばらくその世界に留まりたくなるような作品です。つづく(N)