これまでのお話は第1話・第2話 今回は、いよいよ最終話です。
スタッフの多くに障害のある人を雇って事業を行うとともに、その障害のある人が一般企業に就職できるように支援・指導する就労継続支援A型事業所「Go
Way」(長岡京市)。障害者の就労支援や活動について、代表の三上嘉寿仁さんに伺う第3話。
さまざまな障害のある人と契約を結び、就労継続支援A型事業所(以下「A型」)「Go
way 」を開業した三上さん。一般の企業とはまた違った課題や問題を抱えながら、就労者とともに奮闘していきます。
目標は1日4時間以上
Go wayと就労者の労働契約は1日4時間以上、週20時間契約
1日5時間以上働く人もいますが、半数の人は最低の4時間を働くことが困難です。徐々に目標を上げて8時間働ける体力と慣習をつけ、本人が希望すれば一般就労へと送り出します。それができない状態で就職すると、しんどくなって傷ついて入院したり、働けなくなったりする人もいます。また、就労してつまずいた結果、A型でやり直そうと入所をする人もいます。
自らA型に来る人は、国民として働く義務 を果たそうと頑張る気持ちのある人が多いのですが、いつまでに一般就労しなければいけないといった縛りはないので、1年、3年、中には10年かかって就職する人もいれば、ずっとここで働く人もいます。
障害の弱み・強みの活かし方を探す
Go wayでどう働き、いつ就職するかは本人次第。
自分はどういった力をつけたいのか、その力を伸ばすために、どういったやり方で仕事をしていきたいのかを聞き、それぞれの障害者の強みと弱みをどのように活かすかを考え、障害に合わせた働く場づくりや配慮を検討します。
一般就労ができるだけの体力をつけたいという人には一緒に畑仕事をし、コミュニケーション能力をつけたい、伸ばしたいという人には販売業務を、人と接するのは苦手だけれど料理が好きだという人には調理補助の仕事を勧めます。そして、ひとつの仕事や課題を達成し、次に向かう意欲が出てきたら、それに見合った仕事を担当してもらいます。
こうして仕事をしていく中で、健常者なら配慮や我慢ができることも、障害によってはそれができずに喧嘩になってしまうことは少なくありません。一方で、一言もしゃべらなかった人が2~3年経ってしゃべるようになることもあります。
歓迎すべきことだけど…
体力にもコミュニケーション力にも自信がつき、一般企業に行く気持ちが固まったら、ハローワークに付き添うなどして就職活動をサポートし、就職してから半年は相談にのるなどのサポートを続けます。
このように就職が決まってGo wayを退所することは歓迎すべきことなのですが、それはイコールGo
wayにとって有能な人材の損失となります。特に長年勤めてくれた方が抜けた穴は大きい。
会社の利益を上げるためには、働いている人に能力を上げてもらいたい。一方で能力が上がって自信がついた人を一般就労へ送り出したい。能力が上がれば一般就労へ送り出し、また新しい人を迎えて一から教え、また送り出す。会社経営と福祉的就労が2本柱のA型にとって、ここがジレンマ。しかし、だからこそ言えることがあります。
障害者雇用を納付金で避けないで
行政機関や一定規模以上の企業などは、決められた比率(法定雇用比率)で障害者を雇う義務が定められており、その雇用義務が未達成の場合、「障害者雇用納付金」を納めることになっています。年々、障害者を雇う企業は増加し、法定雇用比率を達成する企業も増えていますが、「納付金を納めて済ませる事業所もまだ少なくない」と三上さんは感じます。「障害者に来てもらってもどう対応したらええかわからんとか、できる仕事がないんちゃうかなど、先入観にとらわれている気がします。海外だと『何ができひんの?』『こっちの仕事やったらできるんちゃう?』みたいな感じで、法定比率関係なく雇用している企業も多いですね。意識の問題でしょう。
僕も彼らのええところや雇っているメリットを見落としていて、彼らがいたからこれができたんやろうなとか、和やかにできたんやろうなとか、後になって気づくことがあります。
文・イラスト オオバチエ
毎週水曜日 10~12時30分 大山崎町農協駐車場
《Go Way》
■農業部門
野菜や果物の生産・販売、農家などの畑作業補助
■軽作業部門
販売業務、弁当やお菓子作りの手伝いなど
■庭園サポート部門
個人の家や物件の庭や周辺の雑草除去や剪定補助
■活動日 平日9〜14時 土日祝日は休み
■お問合せや仕事の依頼は
☎ 075(925)6969
栽培したえごまの葉で作ったえごま茶さわやかな味と香りで、飲むとスッキリ
【参考資料】
厚生労働省HP 障害者福祉 障害者の就労支援について(社会保障審議会障害者部会第113回資料1) 障碍者福祉サービスなど 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業の設備及び運営に関する基準(平成十八年厚生労働省令第百七十四号) ほか
*障害者の「害」の表記には「害・がい・碍」があり、どれを使うのがいいのか意見が分かれ(障がい者制度改革推進会議
第 26 回(H22.11.22) 資料2 『障害』の表記に関する検討結果について )、話し合いが続いています。今回は、障害者自身は「差し障り」や「害悪」をもたらす存在ではなく,社会にある多くの障害物や障壁こそが「障害者」をつくりだしてきた。このように社会に存在する障害物や障壁を解消することが必要(「障害」の表記に関する国語分科会の考え方(令和3年3月
12 日文化審議会国語分科会・資料2:障害の肯定的意見より引用)の見解に賛同し、この記事については「害」を用いることとしました。
【参考資料】厚生労働省HP
令和3年障害者雇用集計結果ほか
就労支援事業運営.com 「就労支援事業の概要」「就労支援事業所マニュアル」 など
ほか