春、桂川や淀川の堤防は満開のセイヨウカラシナで黄色く染まる。花が咲く前の柔らかい花芽は、おひたしや炒め物で食べられる。さらに、その種からは粒マスタードを作ることができるんだ。市販の粒マスタードにも負けない美味しいものを作れるんだよ。僕は、いろんな人のレシピを参考にして粒マスタードを作ったことがあるんだ。では、作り方を簡単に書いてみよう。
5月下旬から6月の初め頃、種の入ったサヤがついている穂先は、乾燥して薄茶色のカサカサした枯れ枝のようになる。指でつまむとサヤは簡単にはじけて、小さな硬い種が飛び出してくる。
種の採取では、サヤがついた穂先を大きな紙袋の中に突っ込んで穂先を手でしごくようにしてやると、サヤがはじけて種がパラパラと紙袋に落ちてくるよ。我が家ではジャムが入っていた小さな空きビン2本分くらいのマスタードが作れればよいので、作業は30分もかからない。紙袋は、はじけた種とサヤの殻でいっぱいだ。
次にやることは、一番やっかいで面倒な種の選別作業。まず目の粗いステンレス製のザルを使って、サヤの殻と種をより分ける。まだゴミの混ざっている種をバットに移し、できればピンセットを使ってていねいにゴミを取り除く。おおよそゴミが取れたなら、そよ風が吹く庭かベランダに出て、空の紙袋の中へ高い位置から種を少しずつ落としてやる。種が落下する間に、軽い小さなゴミは風に吹かれて風下の紙袋の外へ飛んでゆく。種の量が少ない場合は、茶漉しを使って少しずつ細かいゴミを分離した方が楽かもしれない。最後に種を軽く水洗いして、広げた新聞紙の上などで乾燥させれば選別完了だ。水洗いはしなくてもよいらしいのだけれど、小さなゴミが多かったので軽く洗うことにした。
種の選別が終われば、粒マスタードを作るのは簡単だ。作り方をインターネットで検索すれば、レシピがいっぱい出てくるよ。僕は最も簡単なレシピを採用した。選別した種100gに対して塩を大さじ1の割合でビンに入れ、種が十分に浸るくらいの酢を注ぐ。種が酢を吸ってふくらみ、酢の量が減ってきたら酢を継ぎ足す。3~4日したら種をビンから出してすり鉢ですりつぶし、ビンに入れて数日常温に置いておく。その後冷蔵庫で1ヶ月くらい熟成させれば完成だ。
ソーセージにつけるくらいしか使わない粒マスタードは、わざわざ手間暇かけて作るほどのものではないのかもしれない。でも、苦労して手作りした粒マスタードの味は格別だ。なんたって、材料は河川敷の雑草。しかも種は無農薬で採り放題なんだから。ただし、この時期は堤防の草刈りがあるから、ある日突然セイヨウカラシナの群落がきれいさっぱりなくなってしまうので注意してね。
■セイヨウカラシナ
成長すると草丈が1~1.5mになる。食用として栽培されたものが野生化したらしい。
よく似たセイヨウアブラナは、葉の基部が茎を抱きこむので判別できる。
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