今回は「まちライブラリー」についてご紹介します。大阪城公園に隣接する商業施設「もりのみやキューズ」内に、「まちライブラリー@もりのみやキューズ」はあります。壁一面に本棚がめぐらされ、奥にはピザなど軽食が食べられるカフェも。キッズスペースでは、おばあちゃんが孫に絵本を読んでいる姿もみられます。
まちライブラリーが一般の図書館と大きく違うのは、公設施設ではなく地域住民の手によって運営されている私設図書館である点です。所蔵書籍は有志から寄贈されたもので、裏表紙に取り付けられたポケットには寄贈者からのメッセージカードが入っています。本への持ち主の思いを受け取って読むと、書店で購入して読むのとは違う感動がありそうです。また、このカードには借りた人の感想を書き込むスペースもあり、本を通じて人と人とが繋がりあえる工夫がされています。
こうしたまちライブラリーは現在、全国各地に100箇所以上あります。設置場所もカフェや寺院、大学、医院、個人宅などさまざま。「地域に開かれた医院にしたいから」「亡くなった妻の蔵書を活用したいから」など、それぞれの理由で開設されています。もともとまちライブラリーは、「六本木ヒルズ」や「アークヒルズ」などの商業施設を運営する森ビル株式会社の社員だった磯井純充さんによって始められました。磯井さんは森ビルで「アーク都市塾」という社会人の教育事業に取り組んでいたのですが、人事異動のために育ててきた事業から手を引かざるを得なくなります。失意の中で、組織にとらわれず、自分の理想の活動をしようと行き着いたのが、まちライブラリーでした。
活動を始めて気づいたのは、この事業が「本を集めるのではなく人を集める、人のライブラリー」だということ。ある医院では透析患者の待合のために開設すると、自然発生的に患者同士で東野圭吾のファンクラブができたり、猫の本を持ち寄るグループができたりしたそうです。本を求めて人が集まるだけでなく、本を通して自己を開示し、人同士がつながりあえるところに独特の魅力があるのでしょう。その魅力を発揮できる、公共図書館とは一味違う仕組みに惹かれ、まちライブラリーは全国に広がったのです。
実は私たち「大山崎ライブラリーフレンズ」も、町から助成金を得て町内にまちライブラリーの開設の準備をしています。現在、本棚を設置させてくださる町内のカフェや医院などを募集しています。また、本(いらない本ではなくオススメの本!)を寄贈してくださる方も募集中です。町内各所にライブラリーを設置し、そこを巡ることで町の新しい魅力に気づいたり商店の活性化につながったりすれば、とも願っています。
まちライブラリー発起人の磯井さんは、生粋の企業人らしくまずは事業の全体像や事業計画、予算などから検討しようとしたそうです。しかし、上意下達の組織づくりではなく、目の前にいる人たちとの合意形成から出発することで事業がうまくいくことに気づきます。まちライブラリーという新しい公共財産をつくり出し、運営するという小さな自治活動が、まちづくりにつながっていくことを密かに期待しています。 (M)
「まちライブラリー」開設の
お問い合わせ先
070ー6998ー3649(皆川)
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大山崎ライブラリーフレンズ
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