こんにちは、山崎在住のおりこのかずひろと申します。地元の話や映画や本の話を中心にゆるく語るこのコーナー。
今回は作文の話です。
学校の作文
出かける時には、だいたい何か読むものを持っていきます。スーパーに買い物に行く時だろうと風邪で内科を受診する時だろうと、必ず何か持っていきます。というより、持っていないと不安で出かけられません。かつては常時、長短編小説1冊ずつと洋書、英和辞典の計4冊を装備していたのですが、全く読まない場合はただの筋トレになるのでやめました。まれに何も読むものを持っていない時は、活字を求めてさまよいます。電車の中吊り広告やらJTBの観光パンフレットやら、グミの成分表など。スマホは持っていないので、探すのは主に紙媒体です。
このような性格なので、息子が小学生になる時に期待したのは、なんといっても「作文」です。そう、小学生といえば作文の時間。頭を抱える人も多いと思うのですが、僕としては楽しみでしょうがないスペシャルタイム。小学生の中には、素晴らしい文章や詩を書く子がたくさんいるもので、いつかうちの息子も傑作をものにするのではないかと期待していたところ、ついに傑作を編み出しました。彼に許可を得て、ここに公開します。テーマは給食です。
右は茶色で左は白
あじおいしい
右は茶色で
左は白
感嘆。おそらくこの献立はカレー。ザ・シンプルカレー。皿を前にした「わくわく感」がたった3行にしっかりと表現されています。おいしいという形容詞を何倍も増幅させる「あじ」というど真ん中の言葉。大陸を二分する茶色カレーと白ご飯の同時展開。左右から等しく喜びが湧き出てきます。これはいうなれば、何物にも邪魔されないカレーと息子の共生関係。「本命の茶色と存在感の白」をめぐるお昼のひと時を見事に切り取ってみせています。「学校で一番好きな時間は給食の時間だ」という給食への想いとそのクレバーな表現に胸アツです。
そんな話をしていると、妻が作文を披露してきます。「アリスちゃん、こんにちは」と語りかけるのは「不思議の国のアリス」の感想文。小学校の時に書いたそうで、これまた見事な書き出しです。僕の平凡すぎる「わたしはこの作品を読んで、とても感動しました」といったお手本通りのものとは、2光年ほども離れたオリジナリティです。
残念ながら今年は新型コロナの影響で、学校で参観が開催されそうにありません。例年であれば子供たちの傑作を求めて僕は校舎を練り歩けたはずなのに。狙いは、教室の後ろや廊下、踊り場に張り出された絵日記たち。今のこの混乱が収まるところに収まり、世界がより良くなれば、僕は笑顔で老眼をものともせず、壁に張り付いてみんなの作文に感心していることでしょう。壁一面の名作を目前にする、その日が来るのが待ち遠しい限りです。
【プロフィール】
おりこのかずひろ。山崎(島本側)在住(15年目)。私的山崎観光案内所運営、映画「家路」監督。一児の父。基本的にサラリーマンですが、物書きでもあります。

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