大山崎リトルプレイスも応援! 2014年のお仕事図鑑に登場
2014年にお仕事図鑑で初登場した犬ぞり北極探検家・山崎哲秀さんを覚えていますか。 冒険家・植村直己さんに憧れて「世界初」記録を狙う『冒険家』として活動を始めましたが、雪氷学(氷と雪、その周辺環境を対象とする学問)の先生と出会い、未知の領域で調査や探索をする『探検家』に方向転換。それ以来、毎年11月半ばから翌年4月までのおよそ半年間は北極に滞在し、研究者から依頼されたデータを集めたり、調査に同行したりしています。
今年はコロナの影響で、帰国が遅れたり夏に予定していた調査がなくなったりと大変な年でしたが、来シーズンに向けて再び北極へと向かう直前の山崎さんにお話を伺いました。
昨シーズンはどんな活動を?
「10~11月は研究者に誘われて、ネパールのヒマラヤ山岳の氷河調査に参加しました。山は専門外でなんですが、氷を掘ることができるということで5900m地点に登り、氷を90m掘るボーリング調査を手伝いました。そして12月中旬~翌年4月までは例年通り、グリーンランドで研究者から依頼されたデータを収集するために、犬ぞりで測定に出かけました。
グリーンランドでは、1週間ごとに研究者が決めた5㎞間隔の9つのポイントで氷に穴をあけ、氷の厚さや積雪の断面図を作成。スケールを当てて写真を撮ったり、水位を測ったりします。
海氷の厚さを測定するため、穴を開ける作業風景
また、雲の写真を撮って、研究者に送る仕事もしています。人工衛星から観測を行うと、雲が邪魔をして現場のデータとの間に誤差が出るそうです。どれだけ誤差が出たのか、雲のデータを蓄積して精度を高めています。
そして4月、冬の間に自動気象計測器で測っていた気温・風速・風向・湿度のデータを収集し、新たにセットして帰国します」。
夏は研究者も北極で調査を行いますが、真冬に訪れる研究者はほぼゼロ。昔は山岳部出身の研究者も少なくなかったのですが今はほとんどおらず、調査を代行してくれる山崎さんは貴重な存在です。
これらの調査に報酬はなく、「誰もができることではないし、日本の北極観測のためだから」と山崎さんは笑いますが資金は必要です。
気象計のメンテナンス風景
5~6月にはグリーンランド南東部の氷床2000mに登って300mの氷を掘る予定でしたが、コロナの影響で飛行機が飛ばず、中止。この調査では報酬が出る予定で来シーズンの活動資金に充てるつもりでしたが、「もう大打撃で、焦りました」。 日本にもしばらく帰国できませんでした。ちなみに当時、グリーンランドでのコロナ感染は11人で、5月までに全員完治。「南極の次に安全なグリーンランド」と言われたそうです。
今年は11月16日に出発し、7月15日までの長期滞在予定。
「例年の観測作業や昨年中止になったグリーンランドの氷床調査、北海道大学の研究者の観測支援以外に計測器のメンテナンス等を行います」。
こうして毎年データを取っていると、温暖化の傾向がわかります。いや、測って蓄積しないとわかりません。温暖化調査は継続が必要です。
地球の自然環境の変化が最も表れやすいと言われる北極。北極に領土を持つ国以外で北極で一番多く観測しているのは、「日本ではないかな。日本のデータの精度の高さは、世界的に認められていますよ」。その日本の北極観測施設を、山崎さんが拠点にしているシオラパルク村周辺に設置することが、山崎さんの大きな目標のひとつ。
その村は、植村直己さんや大島育雄*さんが日本人として初めて足を踏み入れた地。今は山崎さんが滞在して交流を続けており、とても親日的。かつては狩猟で栄えた村でしたが今は狩猟ができず、どんどん人が流出して40人ぐらいに減少し、過疎化をとおり越し存亡の危機。この村と日本の都市を友好・姉妹都市でつなぐことも目標です。友好・姉妹都市を結べば観測もしやすくなります。また文化交流が活発になれば、過疎化にストップをかけられると期待。このような考えのもと、2017年
に「一般社団法人 アバンナット北極プロジェクト」を立ち上げ、支援を募っています。
*グリーンランドのシオラパルク村で猟師になり、現地の女性と結婚。以来エスキモー人として暮らす。山崎さんにとっては、犬ぞりの師匠。
大山崎リトルプレイスでは、おもてなしウィーク最終日の11月29日(日)に出展し、山崎哲秀さん撮影の写真カレンダーやTシャツなどのオリジナルグッズを販売。売り上げはすべて、山崎さんの活動費に充てられます。また、「山崎哲秀さんのお仕事図鑑』を掲載したバックナンバーも用意しています。ぜひ、お立ち寄りください。*最終ページに「おもてなしウィーク」詳細記事。
山崎さんは今、どこにいて、何をしているのでしょうか。
山崎さん、ブログに詳しく書いてくれています。