ガガイモって何? ガガってどんなイモ? 初めてこの名前を聞いた時、美味しいサトイモみたいなイモだと思った。だけど、名前にイモと付いても地面の中にりっぱなイモはできない。その正体は、草木やフェンスに巻きついて成長するつる草だったんだ。それにしても、ガガイモって変な名前だよね。
ガガイモは河川敷や道端に普通に生えているけれど、数は多くない。似たような別種のつる草が他にもいっぱい生えているから、ハート型の葉っぱを見ただけでは見慣れていない人には識別が難しいだろう。夏に咲く小さく地味な花に気付く人は少ないと思う。秋になり、つるにぶら下がっている実を見つけて、やっとガガイモの存在に気付くんじゃないかな。
ガガイモの花
秋のまだ熟していない実は、黄緑色で表面にイボ状のブツブツがあり、長さ10㎝くらいの紡錘形をしている。冬になり、熟して硬くなったうす茶色の実が縦にパックリ割れると、ぎっしりと中に詰まっている毛のついた種が顔を出す。割れ目から種が飛び出すと、たたまれていた白い極細の毛がタンポポの綿毛のように広がって、風に吹かれて飛んでいくんだ。種に付いている毛は種髪(しゅはつ)という。まさに種に生えたボサボサの白髪みたいだ。割れた実から種を指でほじくり出すと、フワフワの種髪をまとった種が手品のようにモコモコとあふれ出てくるよ。
種がすべて飛び去った後に残った空っぽの実は、小舟かカヌーのような形をしている。遠い昔に日本の神話のことが書かれた「古事記」という書物の中に、このガガイモの小舟が登場するんだ。スクナヒコナという背丈が親指くらいの小さな小さな神様が、海の彼方からガガイモの小舟に乗ってやってくる。そして、オオクニヌシという神様と協力して国造りをするというお話があるんだよ。物語を作った人は、ガガイモの実があまりにも舟の形に似ているので、それに神様が乗ったら面白いと思ったんじゃないのかなあ。だからスクナヒコナをありえないほど小さな姿に描いたんだと、僕は思っている。
ガガイモ種と小舟
大昔にはガガイモがいっぱい生えていて、たくさんの実がいたるところにぶら下がっていたのかもしれない。その実は、人々の想像力をかき立てる不思議な魅力を持っていたんじゃないだろうか。
【補足説明】
■ガガイモ
つる性の多年草。
北海道、本州、四国、九州、朝鮮半島、中国に分布。
葉は縦長のハート形。つるを切ると白い乳液が出る。
種髪はケサランパサラン(毛玉のような謎の物体)の正体ではないかと言われている。
*写真はすべてタムさん撮影
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