本屋さんが本を仕入れるには、さまざまな出版社との手続きを代わりにしてくれる「取次会社」(問屋さん)から仕入れる方法と、出版社と直接取引をする方法(直取引)があります。現在は、問屋さんから仕入れる方法が主流です。
問屋さんのメリットは、たくさんの出版社の本を仕入れることができること。数多くの本が流通する現在、すべての出版社に連絡しなくても、問屋さんを通じてバリエーション豊かな本がそろうのはとても便利。
一方で次々と目まぐるしく本が発行される中、問屋さんが独自の判断で本屋さんに本を送る仕組み(見計らい)があり、それによって本屋さんには必要のない本が大量に送られてきたり、逆に必要な本が届かなかったりします。
また、本屋さんは自分の店に必要な本を注文することもできますが、ベストセラーなどの売れ筋は大型書店に多く届き、小さな店には届かないこともあるなどデメリットがあります。
大量に送られてきた不要な本は、期限内であれば返品できる「委託制度」があるので。すべての在庫を抱える心配はないのですが、本屋さんからの注文分も問屋さんが送ってきた分も、いったん本屋さんに届いた本の代金は当月支払いで、返品分の返金は翌月以降の支払いという仕組みになっています。この返品作業にかかる時間や手間、お金のやりくりは、本屋さんにとって結構な負担になっています。
今度は、本屋さんの利益についてみてみましょう。 本の値段は、新刊書であれば全国どこでも一律の値段(再販制度)ですが、その仕入れの値段は、本の種類や本屋さんによって異なる場合もあります。
本1冊の利益配分は一般的には、出版社が70%、取次会社8%、本屋22%といわれますが、まちの本屋さんでは5~15%の場合もあるとか。たとえば、1000円の本を売れば利益は50~150円。ここから家賃や人件費、包装代などを差し引くと雀の涙しか残りません。
それでも高度成長期の頃のようにたくさん売れた時代はまだ利益がありました。しかし当時のように本が売れない今、売れ筋の本は回ってこず、薄利多売も叶わず、手間と経費はかさむばかり。家賃がいらない、または教科書販売などの利益がある本屋さんでは、その利益で赤字を埋めている状態です。
そんな中、注目を集めるのが直取引と、それを代行する一部の出版会社です。 直取引は、取り扱う本の種類は限られますが、個性的な魅力を持つ本を仕入れることができるので、個々の本屋さんの「色」を出すことができるのです。ただ、仕入れるにはそれぞれの出版社に連絡をしなければなりません。そこで、その手間を一部の出版会社が代行することになりました。見計らいをなくし、本屋さんからの注文分のみ1冊からでも送ってくれます。また、本屋さんが続けられるような適正な卸売り価格を示すなど新たな仕組みづくりを今も模索し続けています。
「じゃ、直取引1本でええやん!」というわけには簡単にいきません。
お店によっては、いろいろなお客さんに合わせて多くの本や雑誌を取りそろえてあげたい、それには従来の取次会社との取引も必要なのです。
本屋さんのなかには、雑貨など利益率の高い商品を置いたり、カフェを併設したりして本で利益が出ない分をカバーしようとしているところもあります。また、利益がわずかでも、続く限り本を通じてまちの人と関われる場所として、地域に本屋さんを残したいという使命感を持って、さまざまな工夫を凝らして続けているお店もあります。
厳しい状況のなか、まちの本屋さんは、どんな思いでいるのでしょう。
まちの人に本を届けたい本屋さんは、手間はかかってもいいという気持ちを持っています。まちの人がほしいという、でも入荷してこない本を、他店で買うことも惜しまない本屋さんもあるぐらいです。
そんな本屋さんがまちに残っていることは、私たちにとって幸運なのかもしれません。
人と交わることが苦手な人でもまちの本屋さんなら気軽に入れ、同じ空間に人といることができて、しゃべっても怒られないけど、しゃべらなくても放っておいてくれる。通ううちにいつのまにやら「おかえり」。久しぶりにいけば「元気やった?」の一言に「居場所あるやん…」とほっこり。
そんなまちの本屋さんが突然なくなっていたら…。
あー!ハセショの本棚が恋しくなってきた!
来月はまた長谷川書店に戻って話を聞きますよー
【紙面版】