パヴェナチュール㊤はこちら
自分の店を構えることを考えて帰国した西村綾さん。
『パヴェナチュール』、オープンの日を迎えます。


自分の店を構えることを考えて帰国した西村綾さん。
『パヴェナチュール』、オープンの日を迎えます。


帰国後すぐに店を構えた訳ではなく、有名なパン屋さんの東京支店オープニングスタッフとして、まず勤務。5年ほど働いた頃、店のいろいろな事を回せるようになったのを機に独立を決意。店舗は自宅敷地内に建てることにし、1級建築士の父親と連絡を取り合いながら開店準備を進めました。

そうは決めたものの、駅から離れた閑静な住宅街。綾さんにも多少不安がよぎりましたが、「ここでやろうと思った以上、悩んでもしょうがない、ここに人を呼べばいいんや!」とキッパリ。

そうは決めたものの、駅から離れた閑静な住宅街。綾さんにも多少不安がよぎりましたが、「ここでやろうと思った以上、悩んでもしょうがない、ここに人を呼べばいいんや!」とキッパリ。
2014年5月「パヴェナチュール」オープン。
『パヴェ』は、フランス語で「石畳」。『ナチュール』は「自然」。ヨーロッパの石畳に自分が積んだ経験を重ね、自然にやって行こうという思いを込め命名。
パンは、フランスの伝統パンや日本の修行時代に習得したパン、その経験を素に構想を練り、自宅の庭で採れたレモンなどを副材料に、母親やスタッフの意見を聞きながら編み出したパン。どれもが「添加物の入った安物ではない、いつでも手に入る、普通に美味しい素材を使って美味しくしようじゃないか!」という綾さんの意気込みが詰まったパンです。

パヴェナチュールでは、そのパンを美味しくする製法に『オーバーナイト法』を取り入れています。少し歴史を紐解くと、1日のうちに生地を作り、焼くという『ストレート法』では、深夜からの作業になるため、フランスでは働き手が少なくなった時期がありました。それではいかん!ということで、前日に生地を仕込み低温発酵させる『オーバーナイト法』が見直され、主流になっていったそうです。この方法だと生地の旨みも引き出せ、一石二鳥。
生地の仕込みの時に大変気を遣うのが水温や気温の変化。「朝は戦争で、水温や焼く時間などを計ることに神経を集中したいので、計量できる材料は前日に準備」しておくほど。その変化で生地の発酵の仕方が全く違い、工程のタイミングも変わってきます。「今は1月(取材当時)で、皆さん、寒く感じると思いますが、パン生地を作っていると春が近いことに気づきます。発酵が大分早くなっているんです。また、東京で働いていた時は、店舗に空調が入っていたため乾燥との戦い。手っ取り早く仕事をしないと商品になりませんでした。でも、父が建てた、このパヴェナチュールの建物は、計算したわけではないのですが、外断熱という工法のお蔭で温度や湿度が一定に保たれ、冬は温かく、夏は涼しく。乾燥や湿気にも悩まされること無く、非常に仕事がやりやすい!」。
週休2日のうち、1日は次の日の仕込みや自家栽培作物を収穫し、作り置きが可能なジャムやクリーム作りに充てています。
自家栽培作物は、自家製肥料でよく肥えた土で育てた完全有機作物。その肥料は、時に売れ残ったパンも肥料ボックスに入れ出来たもので、綾さんの意気込みが詰まったパンは捨てられることなく、次のパンの材料として生まれ変わっています。「肥料ないんか?と家族に言われ、たくさんパンを持って行くと、ありすぎちゃうんか!と大笑い」。

開店して10か月。「父の設計、母が活ける花々、フランス在住の姉が選んだフランス雑貨、私が焼いたパンと焼き菓子が並ぶ『パヴェナチュール』」を口コミや雑誌で知り、訪れた町内外のお客さんは、ここにしかないパンと粋なお店の虜になり、通うことに。綾さんが「ここに呼べばいいんや!」と決断したことは現実となりました。

これからの展望は?の質問に「町のパン屋さんだと当たり前に置いてあるサンドイッチや生クリーム入りパンがうちにはありません。それを置くには冷蔵ショーケースが必要なんです。ランチもしたいし、アイスコーヒーやアイスクリームも置きたいのですが製氷機がない!そういう機材を置くには場所も必要ですし、3年ぐらいフル稼働して資金を貯めないと!10年後くらいに『わぁ!ショーケースがあるわ!』なんてね」と笑いながら答える一方で、「家族で今まで築いてきたものを形にした、パンだけでは語れないパン屋『パヴェナチュール』。家族に感謝しつつ、中途半端なメディアに左右されず、このスタイルをどうやって維持し、10年後に生き残るか考えています」と店の行く末を見つめる店主・西村綾!その綾さんの姿勢に、参加者の皆さん共々惚れ惚れした取材カフェとなりました。
営業 7:30~18:00 (売切次第終了) 定休日 火・水曜日
075-952-1188 京都府乙訓郡大山崎町大山崎白味才51