大山崎に生まれ育ち、フランスへケーキ修行。のはずがパンの道へ。咋春、JR山崎駅からおよそ徒歩13分、天王山の麓の閑静な住宅街に、パン屋『パヴェナチュール」をオープンした西村綾さん。なぜフランス?パン?天王山の麓?など聞きたいと思うのは私だけではないはずと、『同行取材カフェ』と称して8名の参加者の方と一緒にお話を伺いました。




小中高と地元の学校に通い、「やりたいことがいっぱいあり、時間が欲しくて」入学した大阪の大学では経済学部を専攻。大学生活が就職活動の時期に変わっていく中で「手に職系のモノを作る仕事がしたい」と、昼はケーキ屋さんでバイトをしながら、夜間の製菓専門学校に通いました。
フランス語は、人気女優さんが流暢にしゃべっているシーンをテレビで見て、「あ、フランス語勉強しよう!」とラジオ放送を聞きながら独学していた程度で、ほぼしゃべれないも同様。ということで語学学校とホームステイ先は確保して渡仏。

最初のホームステイ先で、異常気象から害虫の大発生というトラブルにいきなり見舞われ、退去を決意し、語学学校に通いながら、住まいと仕事を探すはめに。しかし、フランス語のおぼつかない、小柄な若い日本女性の一生懸命さに良き協力者が続出。住まいは、ひとりのマダムが息子の空き部屋を貸してくれ、仕事は、「最初は無賃金でしか雇えないが、学校へ行かせてあげるし、自分の技術も教えてあげる」という人のよいオーナーが現れ、彼のお菓子屋さんに決まりました。
どこのお菓子屋さんにしろ、パン屋さんにしろ、商品を見れば、日本人が働いているなとわかるくらい、丁寧な仕事をする日本人。まじめで、もの覚えが良いことから大変信頼され、仕事を探すのにあまり苦労はないようです。「オーナーに『給料を払ってもいいな』と思わせる何か、自分がどれだけお店のために頑張れるかを見せれば、フランス人は直ぐ受け入れてくれます」と綾さん。

修行は、昔からよく言われるような「日本の職人」とは違い、基本お話好きなフランス人は、ゼロから懇切丁寧に指導。家や仕事を探す中でフランス語も上達していった綾さんは、仕事に慣れていくとともに自分の意見やアイデアはもちろん、議論やケンカもできるようになっていました。日本でならケンカはご法度ですが、フランスでは言い合いになっても5分後には平常通り。それが綾さんには楽しく、修行先をいくつか変わりながら技術を習得。渡仏して2年ほど経ち、「お菓子の技術も習得したし、そろそろ日本に帰ろうかと考え始めた頃、せっかくフランスに来たのにパンに触ってないのはおかしいんじゃないかと気づいたんです」。すぐに修行先となるパン屋さんを紹介してもらい、働くことに。しかし、学生ビザで来ていた綾さんは、学校に行きながらでないと働けず、学校に行かずに働けば、不法滞在になってしまい…。授業料も家賃も稼ぐとなるといずれ限界がくることはわかっていたので、綾さんはオーナーに「ここのパンが好きで働きたいから労働許可証を取ってくれ」と交渉。1年半かかって取得。正規でそのお店で働けるようになりました。
大山崎ツム・グ・ハグ2015.VOl.2「大山崎てくりふらり」
