『エミリー』
マイケル・ビダード 文 バーバラ・クーニー 絵
掛川恭子 訳/ほるぷ出版
エミリーは父の残した屋敷でほとんど外に出ることなく、人とも会わずに生涯を過ごしました。まちの人々は彼女を「なぞの女性(ひと)」と呼び、「ちょっと頭がおかしいのでは」と噂します。
ある冬の日、エミリーの隣の家に引っ越したばかりの一家の郵便受けに、一通の手紙が投げ込まれます。家の小さな女の子が手紙を拾い、ピアノの練習をしていたママのところに届けます。そこにはピアノを弾きに来て欲しいという願いが書かれていました。手紙はエミリーからのものだったのです。
ママについて行くことになった女の子は考えます。わたしはあの人の家に行くのがうれしいけど、ちょっとこわい気もする。もしかしたら、彼女もこわがっているのではないだろうか。だから、人から隠れて暮らしているのではないだろうか。でも、それはなぜだろう。
エミリーの家では、一緒に暮らす彼女の妹が迎えてくれましたが、エミリー自身は出てきません。上で聴いているといいます。
ふと、階段の上から小さな拍手と声を聞いた気がした女の子は、こっそり部屋を抜け出ました。階段の先に白い服を着た女の人が座っていました。紙切れに鉛筆で何かをしたためながら。女の子は、ポケットに入れていたお土産のゆりの球根を渡しました。「わたし、春をもってきてあげたの」。喜んだエミリーは小さな詩を書いて、女の子にくれました。
人づきあいを避けてきたエミリーも、実は子どもたちとは仲良しだったのです。詩には、この世の不思議と美しさ、そして女の子への感謝の想いが綴られていました。
アメリカを代表する詩人のひとり、エミリー・ディキンソンの一風変わった人となりと、その謎に満ちた暮らしを描いた絵本です。クーニーは、物語の世界観に添った格調高い美しい絵を描いています。
エミリーは父の残した屋敷でほとんど外に出ることなく、人とも会わずに生涯を過ごしました。まちの人々は彼女を「なぞの女性(ひと)」と呼び、「ちょっと頭がおかしいのでは」と噂します。
ある冬の日、エミリーの隣の家に引っ越したばかりの一家の郵便受けに、一通の手紙が投げ込まれます。家の小さな女の子が手紙を拾い、ピアノの練習をしていたママのところに届けます。そこにはピアノを弾きに来て欲しいという願いが書かれていました。手紙はエミリーからのものだったのです。
ママについて行くことになった女の子は考えます。わたしはあの人の家に行くのがうれしいけど、ちょっとこわい気もする。もしかしたら、彼女もこわがっているのではないだろうか。だから、人から隠れて暮らしているのではないだろうか。でも、それはなぜだろう。
エミリーの家では、一緒に暮らす彼女の妹が迎えてくれましたが、エミリー自身は出てきません。上で聴いているといいます。
ふと、階段の上から小さな拍手と声を聞いた気がした女の子は、こっそり部屋を抜け出ました。階段の先に白い服を着た女の人が座っていました。紙切れに鉛筆で何かをしたためながら。女の子は、ポケットに入れていたお土産のゆりの球根を渡しました。「わたし、春をもってきてあげたの」。喜んだエミリーは小さな詩を書いて、女の子にくれました。
人づきあいを避けてきたエミリーも、実は子どもたちとは仲良しだったのです。詩には、この世の不思議と美しさ、そして女の子への感謝の想いが綴られていました。