*『大きななみ』の①は、Vol.30の『今月の絵本』で紹介しました。
20世紀アメリカを代表する絵本作家のバーバラ・クーニー。1917年ニューヨーク市のブルックリンで生まれてから83歳で没する2000年までの間に、100冊あまりの絵本を残しました。1958年に『チャンティクリアときつね』で、1980年には『にぐるま ひいて』で、2度のコルデコット賞を受賞しています。
20世紀アメリカを代表する絵本作家のバーバラ・クーニー。1917年ニューヨーク市のブルックリンで生まれてから83歳で没する2000年までの間に、100冊あまりの絵本を残しました。1958年に『チャンティクリアときつね』で、1980年には『にぐるま ひいて』で、2度のコルデコット賞を受賞しています。
2度目の受賞時、クーニーは63歳。それまで絵だけを担当することが多かった彼女が、以後は自分の言葉で文章を綴ることをはじめています。なかでも『おおきななみ』『ルピナスさん』『ほくの島』は、絵・文を手がけた自伝的3部作と言われます。
また、『おおきななみ』『ルピナスさん』をはじめ女性を主人公とした一連の作品―『おちびのネル』(文・絵)や『エミリー』『わたしは生きてるさくらんぼ ちいちゃな女の子のうた』、『おもいでのクリスマスツリー』『オーパルひとりぼっち』『エマおばあちゃん』(絵)なども、晩年になって描かれた絵本です。
これらの作品にはどれも、「自分の気持ちを一番に、まわりの価値観に惑わされず、選んだ道を胸をはって生きなさい」という女性へのメッセージがこめられています。長年誠実に活動を続けてきた女性作家が、60代になって改めてこのような作品を届けてくれたことに、胸があつくなる思いがします。
『おおきななみ』のあとがきから、訳者の掛川恭子さんの言葉を紹介します。
「バーバラ・クーニーは以前から、アメリカを代表する絵本作家として活躍してきましたが、このところ人生をふかく見すえた話をみずから書き、それを独特のやさしい絵でかざって、これまで以上にすばらしい作品を発表しつづけています。
今回の主人公は、ハティーという女の子で、これはクーニー自身の母親をモデルにしているということです。つまり、クーニーのおじいさんの代が、ドイツからアメリカにわたってきたので、クーニーはドイツ系移民の三代目ということになります。この絵本によると、ドイツにのこったクーニーのひいおじいさんも、お母さん自身も、画家だったようですから、クーニーが絵をかくようになったのは、当然のことだったのでしょう。クーニー自身、この作品のなかにでてくる、おじいさんが建てて、お母さんが育ったホテルで生まれたそうなので、少女ハティーには、自分のすがたもかさなっているのかもしれません。周囲を自分の目でしっかり見て、すすむ道をえらんでいく少女のすがたが、じつにさわやかにえがかれています。
そのうえ、ハティーの成長していくすがたといっしょに、当時の暮らし方や、ニューヨークが周辺にむかってしだいにひろがっていくようすもえがかれているので、その点でも興味深い作品になっています。」
(プロフィール)
ライター/えほん講師 なが田ゆう子
『絵本とおはなし どんぐりん』として、大山崎中央公民館図書室で隔月水曜日におはなし会をしています。