メイベルは、坂のまちサンフランシスコを走るケーブルカーです。朝はやくから夜おそくまで、坂道を上り、向こう側の坂を下り、ターンテーブルで方向を変えると、また上っていきます。途中、坂のてっぺんでしばし停車。乗客と一緒に美しいまちの景色を眺めます。チリンカラン、チリンカラン。鐘を鳴らし、歌いながら、上って下って、向きを変えて、また上って。どんなに坂道がけわしくても、どんなに車内が混み合っていても、いつもほがらか、いつも親切。働き者のメイベルはまちの人気者です。 ところがある日、サンフランシスコを恐ろしい地震と火事が襲います。復興とともにまちは新しく生まれ変わり、路面電車やバスが台頭するようになりました。ケーブルカーは時代遅れ。まちの政治家たちは、ケーブルカーを廃止する計画を打ち出します。 それを聞いたまちの人々はがっかり。ケーブルカーが無くては、このまちは他のまちと変わらなくなってしまいます。まちのことは、まちに暮らす自分たちで決めたい。そう考え、ケーブルカーに気持ちを寄せる人たちは、集会を開き、廃止反対の活動をはじめ、住民投票を行うところまでこぎつけます。 結果、たくさんの人たちの想いが届き、メイベルたちケーブルカーはまちに残ることになりました。そんなわけで、今でもサンフランシスコではケーブルカーが活躍しています。みんなが大好きな愛らしいメイベルに会いに、ぜひ絵本を手に取ってくださいね。
(プロフィール) ライター/えほん講師 なが田ゆう子 『絵本とおはなし どんぐりん』として、大山崎中央公民館図書室で隔月水曜日におはなし会をしています。
絵本とおはなし どんぐりん
4月10日(水)
10時30分~11時
中央公民館別館2階和室