なぜ有給休暇は、あらかじめ買い取ることが認められないのでしょうか。
有給休暇は、賃金を保障しつつ労働者を労働義務から解放し、休息や娯楽、能力開発のための機会を与える制度であり、実際に『労働からの解放』が行われなければ、意味がありません。
有給休暇分の金銭と引き換えに働いても、『労働からの解放』は実現されません。行政通達(1955年11月30日)では、あらかじめ有給休暇を買い取ることは、有給休暇を定めた労働基準法39条に反するとしています。
ただ、有給休暇を行使しないまま2年の時効で消滅してしまった時に、会社が消滅した有給休暇相当の金銭を支払うことは違法ではありません。
ちょっと場面が違いますが、退職によって有給休暇を消化できない場合には、その未消化分の有休休暇を買い取る制度が会社にあった事案について、2005年の東京地裁の判決では、労働者からの買い上げ分の金銭請求を認めています。
ですから、会社が買い取りの制度を定めていれば、消滅してしまった分の有給休暇に限って、労働者が買い取りを会社に請求することは可能です。 おわり
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社会保険労務士 楠 木 仁 史
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