『おおきななみ』はそのタイトル通り、「海」の姿がハティーの心情を多く語ります。
表紙ではまだ無邪気に漠然と「絵を描きたい」と思っている幼いハティーが、穏やかに凪いだ海に向かい、希望の風を全身で受け止めるように両手を広げて立っています。頭上には光を含んだ青空が明るく広がっていて、「わたしに力を!夢を見る力をちょうだい!進むべき道を選び取る強さを、ずっと歩いていける意志の力を、どうかわたしに!」と祈るハティーの声が聞こえそうです。
一方、ハティーが本格的に画家になる決意を固めたときの海は暗く荒れ狂っています。砕ける波は、ハティーの激しく高鳴る胸の鼓動や強い意志、そして不安をも表しているようです。親や周囲の価値観から外れ独自の道を行く決意をしたハティーの内側には、原題にある 'wild' ということばにふさわしい、ふつふつとたぎるような熱い想いがたぎっていて、その想いが目の前の'the Wild Waves' と一体となり大きな力を生み、彼女を支えていきます。黒く垂れこめる雲の合間にもかすかに光が差し込んでおり、遠くの波間を照らしています。小さな淡い光はやがて大きな輝きとなり、ハティーの未来を照らしてくれることでしょう。
ほかにも多くのシーンで海が登場します。さまざまな表情を見せる美しい海を、ぜひご覧になってください。
(プロフィール)
ライター/えほん講師 なが田ゆう子
『絵本とおはなし どんぐりん』として、大山崎中央公民館図書室で隔月水曜日におはなし会をしています。
絵本とおはなし どんぐりん
4月10日(水)
10時30分~11時
中央公民館別館2階和室