天王山が大好きで、いろいろな生きものとお友だちのタムさん。天王山の自然のことをみんなに知ってもらおうと作ってくれたタムさんのお話 第16話
『ブユに刺された!』
『ブユに刺された!』
梅雨に入る前、モリアオガエルの卵を見ようと天王山を散策していたら、鼻の右横をブユに刺されてしまった。ブヨとかブトとかとも呼ばれるブユは、体長5㎜くらいの小さなハエの仲間。蚊と同じくメスが人の血を吸うんだ。蚊のようにストローみたいな口を差し込んで血をチュウチュウ吸うんじゃなくて、人の皮膚を噛んで傷つけて吸血する。その時にブユの口から強烈な毒が注入されるんだって。その毒はじわじわ効いてきて数時間後からひどいことになるんだ。


僕の場合、痛みを感じなかったのでいつ刺されたのかわからなかった。血を吸われた後に少し腫れてむずかゆくなってから異変に気がついたんだ。刺された日はたいしたことがなかったんだけど、翌日になると顔の右半分がパンパンに腫れてしまった。右目はまぶたが腫れて、かろうじて開いている有様。刺された部分はひどい水ぶくれになり、破れた水泡から流れ出る液をティッシュでしょっちゅう拭き取らなければいけない。しかも我慢できないほど痛痒いんだ。かきむしれば皮膚が崩れ、たいへんなことになるのがわかっているので、とにかく耐える。ひたすら我慢する。まさに最悪!
刺されて2日が経ち、状況は悪化する一方。行きたくはないが病院で診てもらい、飲み薬と強いステロイドの塗り薬を処方してもらう。薬が効いたのか、4日目には腫れがかなり小さくなった。6日目には水ぶくれがかさぶたになり、やっと痒みがなくなった。
これまで何度もブユに刺されたことがあるけど、ここまでひどくなったことはない。ブユにもいろいろな種類があるらしいので、最強のブユに刺されたのだろうか。それとも加齢のせいで体質が変わったのかなあ。残念ながら、たぶん後者の方だろう。防虫対策を考え直さなければいけないな。
ブユの幼虫は、水のきれいな渓流や小川にいるんだって。だから水質の悪い市街地では発生しないんだ。皮肉なことにブユがいるということは天王山の自然が豊かな証拠なんだよ。
山には出会いたくない生き物がいっぱいいる。でも、不快だからといってブユやその他の生き物を根絶やししてはいけない。彼らの住処に勝手におじゃましてるのは、僕ら人間の方なんだから。
