こどももおとなも 絵本といっしょに
ほっとひといきつけるじかんを
『かこさとしさん②』
『かこさとしさん②』
先日の地震にはほんとうにびっくりしました。うちの辺りは幸い家のなかの物が落ちたくらいで済みましたが、同じ町内でも屋根瓦が破損したり、壁にひびが入ってしまったりというお宅もあったようです。被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げるとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。
前回の「今月の一冊」でご紹介したかこさとしさんの『地球』のなかにも、地震について触れられている箇所があります。地表からずっと奥深くで営まれているダイナミックな地球の働き。心臓部の核や血流のようなマントルの動きから地震が起こるわけが、かこさんならではの緻密な絵と簡潔なことばによって、子どもたちにもわかりやすく描かれています。
相手が子どもだからといって決して細部を揺るがせにせず、むしろ子どもが見るものだからこそていねいが上にもていねいに、「ほんもの」の知識をしっかりと伝えたいという想いが伝わってきます。「子どもさんをあなどってはいけない」。それは、『地球』のような科学絵本のみならず、ものがたりにおいても貫かれているかこさんの流儀なのです。
いろいろな個性を持ち、さまざまな興味を抱いた子どもがいるのだから、どの作品のどこに目を止め、おもしろいと思うかはその子次第。だからより多くの選択肢を与え、子どもたちの好奇心に応えたい。そう考えるかこさんだからこそ、科学絵本にも今ここに生きる人々の暮らしや日常の風景を散りばめ(『かわ』)、バラエティ豊かなパンを山ほど登場させ(『からすのパンやさん』)、101匹すべてのおたまじゃくしの顔や表情を描き分けるのです(『おたまじゃくしの101ちゃん』)。子どもたちは、そのひとつひとつをつぶさに眺め、味わい、自分の内側にしっかりと蓄えていきます。
少し前に、かこさんが亡くなるひと月ほど前までの1か月間を追ったドキュメンタリー番組が話題になりました。ご病気による壮絶な痛みに耐え、ときには呼吸さえままならない、椅子に座っているのさえお辛いだろう不安定な体調をおして、かこさんは作品をつくり続けておられました。最後の最後まで、ただひたすらに子どもたちのために生きた絵本作家の姿がそこにはありました。
(参考文献)