天王山が大好きで、いろいろな生きものとお友だちのタムさん。
天王山の自然のことをみんなに知ってもらおうと作ってくれたお話。
タムさんのお話⓯
『子ギツネコロコロ』
■補足説明
天王山の自然のことをみんなに知ってもらおうと作ってくれたお話。
タムさんのお話⓯
『子ギツネコロコロ』
去年の6月、夕方に桂川の堤防を自転車で走っていると、50mくらい先の斜面を2匹の仔犬がじゃれていた。若葉がそよぐ草原の中を、たがいのしっぽを追いながら、楽しそうにくるくる駆け回っている。親は少し離れて、子供たちをしっかりと見守っていた。
野良犬の親子だろうか。でも、なんか違うなあ。細長い鼻、ピンと立った三角の耳、そしてフサフサした長いしっぽ。そうだ、キツネだ。夜行性で用心深いキツネが、まだ明るいのに、しかも親子で。こんなことはめったにないよ。


自転車を降り、逃げないでおくれと念じつつ、そおっとゆっくり近寄ってみる。願いは叶わず、僕に気付いた子ギツネたちは、コロコロ転がるように走って、林の中に逃げ込んだ。親ギツネは茂みの前に座り、警戒しながら、上目づかいで僕の方をじっと見ている。キツネの眼の瞳孔は、ネコのように縦長のスリット状だ。この細長い三日月のような瞳に見つめられると、こちらの心を見透かされているようで、なんだか怖い。昔の人が、キツネに畏敬の念を抱いたり、妖怪のごとく恐れたのも、この瞳のせいではないのかな。


桂川ではキツネを時々見かけるけど、子ギツネに出会ったのは初めてだ。この子たちは河川敷の巣穴で生まれたんだろうか。まだ、キツネが繁殖できる環境が残っているんだ。エサの野ネズミが豊富なんだろう。桂川の自然が豊かな証拠だね。
そういえば、ここは「狐渡し」と呼ばれた八幡と大山崎を結ぶ船の渡し場があったところ。川の流れが、キツネの七変化のようにくるくる変わるから、そう言われるようになったんだって。でも、本当は可愛いキツネがたくさんいて、旅人たちと遊んでいたから、そんな名前が付いたんじゃないかなあ。
■補足説明
この辺りに生息しているのはホンドギツネ。
本州、九州、四国に生息している。
北海道にはキタキツネが生息している。
主にネズミ類、鳥類、昆虫を捕食。果実も食べる。
草原や森林の開発で生息環境が悪化し生息数が減少。
縦長のスリット状の瞳は、明るさによって瞳孔の大きさをほぼ0から全開まで素早く変化させられるため、明るさの変化が多い茂みの中では丸い瞳より有利であるらしい。
*写真は、タムさん撮影