おはようございます、大山崎はぐです。
今日は、U子さんが図書ボランティアとして
小学校で絵本の読み聞かせをしたときのお話
絵本でひといき
子どもたちにとっては、新入学を迎えたり学年が上がったり、新しい日々に身を置くひと月を終え、そろそろ緊張がゆるむころ。体調を崩しやすい時期です。小学校に読み聞かせに行くと、疲れているのか少し顔色が冴えない子もいます。新しい教室、新しい教科書、新しい友だち…「新しい」尽くしの毎日はうれしい反面、負担も案外大きいもの。ちょっぴりでもひといきつく時間を届けられたらと、今年も「図書ボランティア」として絵本を手に通わせてもらっています。
今年度はじめての担当は1年生でした。みんなと同じ新1年生が主人公の『さくらの さくらちゃん』を読みました。わくわくしながら学校にやってきた「ひろちゃん」と緊張気味の「あゆちゃん」。どちらに気持ちが寄り添うかは、子どもによって違います。
同じく新入生の「くんちゃん」が、慣れない環境への不安から教室を飛び出してしまう『くんちゃんのはじめてのがっこう』や(先生のあたたかな見守りですぐに戻ってきます)、引っ越し先の見知らぬ土地での出会いを描いた『とん ことり』もこのシーズンにぴったりです。
毎回教室に入ると、本を読む前に子どもたちとし少し話します。「風邪が流行っているみたいだけど元気?」「このクラスはロッカーの使い方が上手だね。どの子もきちんと片付けられているね」「後ろの絵は図工の時間に描いたのかな?どれも色づかいがステキだね」などなど。ことばをかわし顔を合わせて教室を見回すと、意外といろいろなことがわかります。

読むおはなしを素直によろこんでもらえるとうれしいものですが、通常学年が上がるにつれて反応は鈍くなります。高学年になったら自分で読む力もあるのだし、もう読み聞かせはいいのでは?という人もいます。それでもやはり、人の声を通じて読んでもらうことと自分ひとりで読むのとはまったく別の体験ですから、できればまだ続けたい。だんだん複雑になっていく自分の内面を持て余す年代だからこそ、一緒に読む意義があるように思うのです。いやほんとうは理屈はどうでもよくて、小さな1年生だった子たちが育っていく姿を見ていたいだけなのかも知れません。
わたしたちは、たった月2回10分間ずつの読み聞かせと、年に2回のおはなし会で顔を合わせるだけの「絵本のおばちゃん」ですから、子どもたちのためにできることなど知れています。いなくてもほとんど誰も困りません。先生によっては、あまり歓迎していないことを態度に出す方もいらっしゃいます。けれども学校には子どもたちには、こういう時間もこういう役割も必要なのだとわたし自身は勝手に信じています。
以前にご紹介した『くまくんの絵本シリーズ』はじめ、数多くの絵本や翻訳児童書などを残された渡辺茂男先生は、子どもに絵本を読むことを「心に『緑の種』をまく仕事」だとおっしゃっています。種まきですから、すぐに成果が目に見えたりはしません。でも必要なのです。それは、「すぐれた絵本には、人間が人間であるために、いちばん大事な情緒と想像力と知恵が、いちばん単純な、いちばんわかりやすい、いちばん使いやすい形でこめられて」いるからです(『心に緑の種をまく 絵本のたのしみ』より)。このことばを胸に絵本を読んでいきたいと、あらためて思う5月です。
■今回取り上げた絵本と本たち
(プロフィール)
今日は、U子さんが図書ボランティアとして
小学校で絵本の読み聞かせをしたときのお話
絵本でひといき
新しい季節に ライター/えほん講師 なが田ゆう子
こんにちは。緑のまぶしい季節です。GWも目前。お出かけの予定を立てている方も多いことでしょう。まちを訪れる観光客のみなさんも大勢見かけるようになりました。
子どもたちにとっては、新入学を迎えたり学年が上がったり、新しい日々に身を置くひと月を終え、そろそろ緊張がゆるむころ。体調を崩しやすい時期です。小学校に読み聞かせに行くと、疲れているのか少し顔色が冴えない子もいます。新しい教室、新しい教科書、新しい友だち…「新しい」尽くしの毎日はうれしい反面、負担も案外大きいもの。ちょっぴりでもひといきつく時間を届けられたらと、今年も「図書ボランティア」として絵本を手に通わせてもらっています。
今年度はじめての担当は1年生でした。みんなと同じ新1年生が主人公の『さくらの さくらちゃん』を読みました。わくわくしながら学校にやってきた「ひろちゃん」と緊張気味の「あゆちゃん」。どちらに気持ちが寄り添うかは、子どもによって違います。
同じく新入生の「くんちゃん」が、慣れない環境への不安から教室を飛び出してしまう『くんちゃんのはじめてのがっこう』や(先生のあたたかな見守りですぐに戻ってきます)、引っ越し先の見知らぬ土地での出会いを描いた『とん ことり』もこのシーズンにぴったりです。
毎回教室に入ると、本を読む前に子どもたちとし少し話します。「風邪が流行っているみたいだけど元気?」「このクラスはロッカーの使い方が上手だね。どの子もきちんと片付けられているね」「後ろの絵は図工の時間に描いたのかな?どれも色づかいがステキだね」などなど。ことばをかわし顔を合わせて教室を見回すと、意外といろいろなことがわかります。

先生の指導(ことば)が行き届いているクラスは、飾ってある作品にものびのびとした勢いが感じられ、部屋も整頓され、なんとはなしに居心地がいいのです。子どもたちと先生が一緒にがんばっている様子が伝わってきます。そういう雰囲気のなかでは、絵本のことばもすんなりしみていくように思います。
読むおはなしを素直によろこんでもらえるとうれしいものですが、通常学年が上がるにつれて反応は鈍くなります。高学年になったら自分で読む力もあるのだし、もう読み聞かせはいいのでは?という人もいます。それでもやはり、人の声を通じて読んでもらうことと自分ひとりで読むのとはまったく別の体験ですから、できればまだ続けたい。だんだん複雑になっていく自分の内面を持て余す年代だからこそ、一緒に読む意義があるように思うのです。いやほんとうは理屈はどうでもよくて、小さな1年生だった子たちが育っていく姿を見ていたいだけなのかも知れません。
わたしたちは、たった月2回10分間ずつの読み聞かせと、年に2回のおはなし会で顔を合わせるだけの「絵本のおばちゃん」ですから、子どもたちのためにできることなど知れています。いなくてもほとんど誰も困りません。先生によっては、あまり歓迎していないことを態度に出す方もいらっしゃいます。けれども学校には子どもたちには、こういう時間もこういう役割も必要なのだとわたし自身は勝手に信じています。
以前にご紹介した『くまくんの絵本シリーズ』はじめ、数多くの絵本や翻訳児童書などを残された渡辺茂男先生は、子どもに絵本を読むことを「心に『緑の種』をまく仕事」だとおっしゃっています。種まきですから、すぐに成果が目に見えたりはしません。でも必要なのです。それは、「すぐれた絵本には、人間が人間であるために、いちばん大事な情緒と想像力と知恵が、いちばん単純な、いちばんわかりやすい、いちばん使いやすい形でこめられて」いるからです(『心に緑の種をまく 絵本のたのしみ』より)。このことばを胸に絵本を読んでいきたいと、あらためて思う5月です。
■今回取り上げた絵本と本たち
『さくらの さくらちゃん』中川ひろたか 植垣歩子/自由国民社、『くんちゃんのはじめてのがっこう』ドロシー・マリノ まさきるりこ/ペンギン社、『とん ことり』筒井頼子 林明子/福音館書店、『心に緑の種をまく 絵本のたのしみ』渡辺茂男/岩波現代文庫
(プロフィール)
ライター/えほん講師 なが田ゆう子