京都と大阪の府境にある小さな町・大山崎で、リトルプレス「大山崎ツム・グ・ハグ」など印刷物を作っている大山崎リトルプレイスです。このブログでは「大山崎ツム・グ・ハグ」記事を中心に紹介しています。 https://www.o-little-place.com/
今日もリトルプレス『大山崎ツム・グ・ハグ』の制作に励んでます。。。
高校に入ったら、野球部に入ろうと考えていた時期がありました。中学の部活では3年間ハンドボールをやっていたのですが、知り合いが誰も行かない高校を受験して、一から野球をやったらどうなるだろうかと空想していました。レギュラーにはなれないだろうし、活躍している姿を全然思い描けないものの、すごく面白いんじゃないかと思ってときめいていました。

色々調べた結果、その選択は簡単ではなく、野球ってのは思いっきり投げて、思いっきり打っているだけじゃないということにすぐに気が付きました。技術だらけです。今から始めても無理かもと思って結局自宅近くの高校に進学し、ハンドボールを続けることにしました。部活ではキャプテンまで務めたものの熱意は続かず、高校2年の後半ぐらいからはどんどん文系寄りになり、やがてスポーツそのものへの興味を失うのですが、プロ野球だけは未練たらしくテレビ中継を見ていました。

というわけで、僕の人生において、野球はそれなりの影響を与えています。映画を作りたいと思ったのも、W・P・キンセラの小説「シューレス・ジョー」、いわゆる「フィールド・オブ・ドリームス」を映画館で見たからで、部活をさぼって上映最終日に初めて一人で見に行った映画です。見終わって「これだ!」と興奮したのを覚えています。世間から行方をくらました「ライ麦畑でつかまえて」のJ・D・サリンジャー(映画版ではテレンス・マンという架空の作家になっている)が出てくるのも、後にアメリカ文学が好きになるきっかけになりました。個人的な文化革命はすべてこの映画から。つまり、野球の誘いによるものでした。

もう夏休みも終わりますが、ここで課題図書として、いくつか野球関連の作品をあげておきます。まずは、同作家のアメリカ野球を褒める小説では全然ない「素晴らしきアメリカ野球」。これは新訳がでました。続いて、奇抜な設定の「ユニヴァーサル野球協会」も忘れ難い。あとは、村上龍の笑える「走れ! タカハシ」を。

漫画であれば、やはり高校野球もの。絶賛中の「忘却バッテリー」。モダンな理論山盛りの「おおきく振りかぶって」が最近のお勧め。それから、忘れてはならないP・オースターの「なぜ書くか?」というエッセイ。八歳の頃、偉大な野球選手である「ウィリー・メイズ」のサインを球場でもらえそうになるものの、たまたまペンを持っていなくてサインしてもらえなかった話を書いています。それ以来、常にペンを持ち歩くようになったという話。僕はこの話がとても好きで、時々思い起こしています。

そんな野球に何か因果があるのか、息子が急に野球をやりたいと言い出したのが2年前。いったい何を見たのか。家には野球の「野」の字もなく、ただあだちみつるの漫画があるのみだったのですが。

「少年野球は親の負担がきつい」という噂に怯えて1年間無視し続け、観念して入れた少年野球の世界は思っていたより優しい世界でした。根性論は根強く、ジェンダー平等は遠く、たまに僕が嫌いな怒声も飛びますが、キャプテンは女の子(ものすごいボールを投げる)だったり、お母さんもグラウンドに出たり、お父さんがマネージャー的なこともやったり(僕のことです)します。助け合って運営されています。

ちなみに、これを書いている少し前、応援していた乙訓高校が夏の大会準決勝で敗退しました。無念です。見ていましたか? 今、乙訓高校の野球部には知り合いの息子さんが所属しているのもあって、熱心に見ていました。そういうわけで、今はこれまでの人生で一番「フィクションでない」野球が身近になっています。

グランド_野球

【プロフィール】

おりこのかずひろ。山崎(島本側)在住(15年目)。私的山崎観光案内所運営、映画「家路」監督。一児の父。基本的にサラリーマンですが、物書きでもあります。

これまでのお話はこちらから全話ご覧になれます。


■掲載記事⇩ 

プレイボール

■P2に掲載
Vol55_0815_ページ_2

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