「ヘレンドの躍進はまだ続くで。ロンドン万博での功績が認められ、1863年に皇帝から騎士勲章を授けられ、翌年には閉鎖に追い込まれたウィーン磁器工房の技術や意匠を引き継ぐことを許されたんや。
ウィーン磁器工房は設立当初から経営が思わしくなかったが、マリア・テレジアが国営化して繁栄した。しかし、最新鋭の機器や技術を備えて産業博覧会などで次々と受賞するボヘミア磁器に押され、ロンドン万博以降は注文がピタッと止まってしまったんや。エリザベート皇妃の支援はあったが、1864年についに150年に及ぶ歴史に幕を下ろすことになってしまった。
1867年、オーストリア・ハンガリー間でアウスグライヒ(妥協)が結ばれ、両国の国王はオーストリア国王ひとりとし、外交・国防・財政などはハンガリーの自治を認める『オーストリア=ハンガリー二重帝国』が樹立。フランツ・ヨーゼフとエリザベートはハンガリー国王・王妃として迎え入れられ、記念として皇妃お気に入りのゲデレ城を献上された。その新国王からモールは、社気的威信のためにユダヤ人実業家なら誰もが欲する貴族の称号を授けられたんや。
同年、ヘレンドはもちろん、日本も初参加の第5回パリ万国博覧会が開幕した」。つづく
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参考文献
『Herendi porcelain Magyarorszagagrol』(ヘレンド展 編集 大阪市立東洋磁器美術館)
『HEREND』(ハンガリーの名窯「ヘレンド陶磁名品展」図録)
日本側監修:前田正明 翻訳:六嶋由岐子 発行:朝日新聞社文化企画局 大阪企画部
ル・ノーブルHP ヘレンド190周年ほか
「ヨーロッパ宮廷陶磁の世界」前田正明・櫻庭美咲 角川選書
「19世紀ハンガリー磁器産業における企業活動―ヘレンド社の戦略」高田茂臣
『ハンガリーの歴史』 南塚信吾 河出書房新社
『ハンガリーの建築スタイル紀行―ジョルナイ工房の輝き』
パルフィ・ジョージ デーヴェーニー・シャーンドル チェンケイ・エーベニー INAX出版
『ロシア、中・東欧ユダヤ民族史』ブレブク・アニコー著・寺尾信昭訳 彩流社
『ユダヤ人の成功と悲劇-資本主義と民族主義への対応-』ジェリーZ.ミューラー著 千葉啓恵訳 一灯社
『ハンガリーを知るための47章』羽場久浘子編集 明石書店
『博覧会の政治-まなざしの政治学』吉見俊哉著 中公新書
『改訂版 万国博覧会―技術文明的に―』吉田光邦著 NHKブックス
『大英帝国博覧会の歴史』 松村 昌家著 ミネルヴァ書房
『ハプスブルク帝国の鉄道と汽船』 佐々木洋子著 刀水書房
『皇妃エリザベートを巡る旅』沖島 博美著 河出書房新社
ほか